業界のホンネとタテマエ


  • このコーナーは、様々なテーマについて業界の方々に屈託のない意見を述べて頂いたり、 スクウェイブとしてのコメントを徒然なるままに記載することを主旨としている。
  • 従って、このコーナーに記載される内容はスクウェイブの事業説明の補足を意図したものではない。
    またゲストの方の意見も含めて、ここに記載される内容は、 スクウェイブの公式見解とは必ずしも一致しないので予め御了承頂きたい。
  • その前提で、このコーナーは、記載者のホンネを記し、 タテマエとのギャップから何かしら読者の業務のヒントになることがあれば大変素晴らしいが、 むしろ私としては、ちょっとした気分転換になって頂ければ本望と考えている。
    是非肩肘を張らずに一杯のコーヒーを飲むついでにご覧頂きたい。
2004年5月20日 黒須 豊

第14回:「大学入試面接から見る若者」

掲載日: 2005年1月5日
執筆者: 株式会社スクウェイブ
代表取締役社長 黒須 豊
  • 私は平均して毎年2人程度の高校生の話を真剣に聞く機会を持っている。最近の高校生らの悪態は有名だが、私に会いに来る彼らは、それまでの人生で一度も見せたことがないのではないかというほど緊張した面持ちでやってくる。
  • 彼らはマサチューセッツ工科大学(MIT)の面接を受けるためにやってくるのである。私は1998年以来 MIT の面接官を務めている。今回はこのMIT における面接を通じて感じる最近の若者像について話してみたい。
  • まず、最近MITを受験する若者の最初に挙げるべき特長は何かと言うと、総じて英語が上手になっているということである。このまま行けば、日本人の英語下手は将来は改善されるかも知れないと実感する。
  • しかし、今回話題にしたいのは彼らの志望動機についてである。彼らは世界的な科学者やエンジニアになりたいという者が最も多い。確かにMITはそのような学生で溢れているし、事実世界で最も多くノーベル賞受賞者を輩出する知識の殿堂でもある。
  • しかし、なぜそこまでして海外の大学に行きたいのか。私自身がMITの大学院卒業者であるので、気持ちがわからないわけではないのだが、いまひとつ説得力のある理由を聞くことができないことが多い。
  • 確かに国内の大学よりも、MITで学ぶ方が世界で活躍するうえで有利な点は多々あるだろう。しかし、国内の大学を卒業することで得られる知識も決して皆無ではない。言うまでもなく、国語の能力は圧倒的に国内の大学受験を経て国内の大学を卒業した者のほうが優れている。
  • さらに、日本の社会構造や共通の規範を少なからず反映するサークルやクラブ活動から学ぶことは少なくない。いわゆる「場の空気を読む」というような芸当は、大学時代に醸成され始める能力の1つであろう。
  • これらは、たとえ、その後国外で働きたいと思う場合でも、日本人ならではのアドバンテージとなることが少なくない。
  • つまり、ほとんどの受験生が、大学時代をMITで過ごすことの利点ばかりに目を向け、日本で過ごせば得られるであろう利点を喪失する可能性をあまりにも過小評価し過ぎている。
  • ややもするとアメリカ人になりたいと思っている日本人の若者が少なくないのだが、実は日本人としてのアドバンテージを有した上でアメリカで学ぶ方が、ずっと有利で素晴らしいことであるのだということを彼らに理解してもらいたいものである。
  • もちろん、バランスの問題なのであって、白か黒かという話ではない。国内で学ぶべきこととアメリカで学ぶべきことの双方が必要なのだ。さらに大変重要なポイントは、自分が学びたいということよりも、自分にとって必要なこと を冷静に見る目を持つことである。そうすれば、自然と答えは出てくるものである。
  • さて、国内の ITマネジメントに目を転じて見よう。国内では、残念ながら、アメリカ一辺倒の物真似か、逆に国粋主義的な頑なな対応しか実施しない企業が少なくない。その両者に共通する傾向は、欲しいものを追求し、本当に必要なものを追求する努力を怠っていることである。つまり、先の若者と同じような間違いを犯している場合が 少なくない。
  • 昨年の話だが、とある中堅企業の IT 部門長と IT コスト妥当性追及の重要性について話をした時に、臨席していた彼の部門スタッフから「本当は必要なんだろうと思うけど、うちの会社(経営トップ)は欲していないので」という主旨の言葉が飛び出した。
  • 経営トップが IT のプロである場合は例外であるが、そうでない場合、 IT 部門は経営トップの欲するものだけを用意するのではなく、是が非でも会社にとって本当に必要なものは何かを考えて、経営トップを啓蒙する努力を忘れないで頂きたい。
  • なお、その部門長は沈黙の笑みを浮かべていた。つまり、彼は、まだ成長途上のスタッフを寛大な心で見守る主旨で敢えて黙っていたのだろう。この点は、当部門長の名誉のために付け加えておこう。