業界のホンネとタテマエ

  • このコーナーは、様々なテーマについて業界の方々に屈託のない意見を述べて頂いたり、 スクウェイブとしてのコメントを徒然なるままに記載することを主旨としている。
  • 従って、このコーナーに記載される内容はスクウェイブの事業説明の補足を意図したものではない。
    またゲストの方の意見も含めて、ここに記載される内容は、 スクウェイブの公式見解とは必ずしも一致しないので予め御了承頂きたい。
  • その前提で、このコーナーは、記載者のホンネを記し、 タテマエとのギャップから何かしら読者の業務のヒントになることがあれば大変素晴らしいが、 むしろ私としては、ちょっとした気分転換になって頂ければ本望と考えている。
    是非肩肘を張らずに一杯のコーヒーを飲むついでにご覧頂きたい。
2004年5月20日 黒須 豊

第31回:対談「東芝の情報システムマネジメント」(1)〜IS子会社設立当時を振り返る

掲載日 : 2008年5月21日

ゲスト : 前 東芝ISセンター長 兼 

       東芝インフォメーションシステムズ代表取締役社長
       小柳 順一 氏

インタビュアー : 株式会社スクウェイブ代表取締役社長
            黒須 豊

株式会社東芝は、2002年にIS部門を統合・分社し、東芝インフォメーションシステムズ株式会社(以下 TSIS)を設立しました。今回は、東芝の情報システムを熟知する小柳順一氏に、立ち上げ当時の施策とそこに込められた想いを伺います。

 
  • 黒須
  • 子会社立ち上げ当時、「費用削減とモラールアップの実現」という以外、具体的な指示はなかったそうですね。
  • 小柳氏:
  • サーバー統合のような一般的な費用削減施策(案)はありましたが、基本的には「やり方は任せる」でした。分社化は「サービスが悪ければ使わない」という暗黙のメッセージですから、絶対に使わせてみせるという想いは強かったですね。 ここまで来ることができたのは、過去がない新しい会社だったことに加え、優先課題が費用削減だったので、売上や損益等の数字に追われなかったことも幸いしました。事実、約束以上の成果を出したときは、その一部を足腰強化のための施策へ積極的に投資してきました。サービスレベルアップや社員のモラールアップにつながることなので、この投資には信念を持っていましたね。
  • 黒須:
  • 5年間で、どれくらいの施策をどのように考え出してきたのですか?
  • 小柳氏:
  • 施策は全部で40くらいです。費用削減は4分の1で、残りは足腰強化です。費用削減とモラールアップを頂点に、競争優位性の確保をその脇に置いて、そのために何をすべきかということをドリルダウンツリーで、5、6段階に落とし込みました。決して難しいことをしてきたわけではありません。もっとも、思いつきもたくさんありました(笑)。
  • 黒須:
  • すべてご自身で考えられたのですか?
  • 小柳氏:
  • 私だけでは到底できません。ただ、どの施策についても、自分なりのシナリオを考え、確実に納得するようにしました。足腰強化のような施策は、PDCAを回しながら継続することで成果が徐々に滲み出てくるものです。納得できていないと、長い時間軸の中で私の言葉にブレが出てきますからね。ブレを感じたら、誰も真剣に取り組まないでしょう。
  • 黒須:
  • そうですね。そうしてTSISが足腰を鍛えるための施策を色々と講じることができたのは、費用削減ができたからこそだと思いますが、そこまで手が回らない企業も多いようです。TSISはなぜ費用削減ができたのでしょうか?
  • 小柳氏:
  • 費用削減施策に妙案はありません。まずは東芝の中にあった複数のIS部門を統合したことでしょう。これでハードウェアやソフトウェアの集約と、“人財”の流動化を可能に環境が整った。それと、費用削減を示すためのロジックを早い時点から作り上げたことです。サービスの量が2倍になったのに、「費用が変わっていな
    い」と言われて説明できないようでは困りますからね。これで目標達成時期が明確になった。そして一番大事なこと、現場の一人ひとりが施策を信じてやり抜くこと、やり続けることです。これについては、現場そして現場を引っ張ったリーダーの頑張りは、素晴らしかった。あるIT会社の人に「この馬力はすごい。到底かなわない」と言われたのを鮮明に覚えています。
  • 黒須:
  • 素晴らしいですね。色々なIS子会社の方に、「分社化によってIS子会社の所属になった社員のモチベーションが上がらない」という悩みを伺うことがありますが、それについてはどうお考えですか?
  • 小柳氏:
  • 皆が「TSISに来てよかった」と感じられる会社にしたいと思いました。ポイントは3つあります。
    1つ目は、社員にとっての変化、「TSISは自分たちの会社だ。TSISに来たことによって、脇役から主役になった。その代わり責任も重くなった」ということを繰り返し伝えました。ISメンバー一人ひとりがお客様にサービスを提供し、そのお客様から対価を頂かないと、会社は成り立ちませんからね。SLA、部門別損益やサービス別損益といった仕組みの導入は、自分たちの実力を知る上でも有益でした。
    2つ目はTSISの位置づけ、「東芝本体と一体」ということです。確かに形の上では子会社ですが、東芝本体のIS機能の大半を担っている分社会社ですから、同じ仲間と考えてよいでしょう。そこで東芝本体のIS部門との間で積極的にローテーションを行うことにし、それを確実にするための施策を講じてきました。
    3つ目が、社員のモラールアップにつながる施策と第三者評価です。私が「TSISは素晴らしい会社になった!」と叫んでも、誰も信じてくれませんからね。日頃から「評価は他人がするもの。自身を評価するのは一人よがり」と口にしていましたし。そういう意味では、SLRのようなベンチマークで2年連続でIS子会社賞を頂けたことは、タイミング的にも良かったと思います。 「種を蒔けば実がなる」と実感させるのは、私の役目ですから。
  • 黒須:
  • 貴重なお話をありがとうございました。
 

 *次回は「TSISの売上増と効率化に向けての施策」について伺います。お楽しみに。