業界のホンネとタテマエ

  • このコーナーは、様々なテーマについて業界の方々に屈託のない意見を述べて頂いたり、 スクウェイブとしてのコメントを徒然なるままに記載することを主旨としている。
  • 従って、このコーナーに記載される内容はスクウェイブの事業説明の補足を意図したものではない。
    またゲストの方の意見も含めて、ここに記載される内容は、 スクウェイブの公式見解とは必ずしも一致しないので予め御了承頂きたい。
  • その前提で、このコーナーは、記載者のホンネを記し、 タテマエとのギャップから何かしら読者の業務のヒントになることがあれば大変素晴らしいが、 むしろ私としては、ちょっとした気分転換になって頂ければ本望と考えている。
    是非肩肘を張らずに一杯のコーヒーを飲むついでにご覧頂きたい。
2004年5月20日 黒須 豊

第32回:対談「東芝の情報システムマネジメント」(2)〜売上増と効率化に向けて

掲載日 : 2008年6月18日

ゲスト : 前 東芝ISセンター長 兼 

       東芝インフォメーションシステムズ代表取締役社長
       小柳 順一 氏

インタビュアー : 株式会社スクウェイブ代表取締役社長
            黒須 豊

株式会社東芝は、2002年にIS部門を統合・分社し、東芝インフォメーションシステムズ株式会社(以下 TSIS)を設立しました。今回は、東芝の情報システムを熟知する小柳順一氏に、売上増や効率化のために行った施策に
ついてお話しいただきます。

 
  • 黒須
  • 子会社立ち上げ当時のミッションであった「運用費用削減」は、TSISにとって売上減を意味しますよね。雇用の確保やTSISの発展のためには売上増が必要だと思いますが、どのような施策を行ってきたのですか?
  • 小柳氏:
  • 変わったところでは、CM(Customer Manager)*道場が挙げられますね。費用削減と売上増は、車の両輪です。費用削減はお客様に対する約束事なのでサービスの価格は下げなければなりません。したがって、下がった分は確実に補う必要がある。仕事が来るのを待っていては確実とはいえませんので、“攻め”が必要と考え、提案スキルを身につけるための教育を始めました。
    CM道場では、社員の生煮えの提案を3ヶ月かけて目標レベルまで引き上げていくのですが、社員は週に1度、講師に活動状況を報告し、指導を仰ぎ、次週の活動につなげることを繰り返します。
    例えば、お客様の了解を得て訪問時の会話を録音させてもらい、講師と一緒に聞いて、話のポイントを探った
    り、事前のプレゼン資料のチェックや予行演習等、まさに手取り足取りのOJTです。1人当たりの教育費は、車1台買える程度の金額になりますが、継続的な売価ダウン要請のみならず、今後のお客様の期待に応えるた
    めには必要な投資だと考えています。
  • *CM(Customer Manager)::TSIS独自の認定資格。開始から5年間で、計67名が取得している。

  • 黒須:
  • TSISならではの熱心な教育ですね。では、効率化に向けてはどんな施策を行いましたか?
  • 小柳氏:
  • 2つあります。1つは生産性向上ですが、特に人に起因するトラブルが起きやすい業務は、主体を人からプロセスに変えていかなくては効果を確実にすることができません。 このため、CMMI/L5、ISO9001、ISO20000、ISO27000等を積極的に導入してきました。しばらくは負担を感じますが、プロセスが組織に根付くと大きな効果が期待できます。この種の施策は、トップ自ら信念を持って牽引し続けることに尽きますね。
    もう1つは、機能集約です。各拠点にあった開発機能・運用機能を開発センター・運用センターといった組織に
    集約しました。この考え方を東芝グループIS全体に発展させた方針策定が、私の最後の仕事でした。
    2004年から2年間、東芝本体のIS部門長の職をかねていましたが、このとき、分社化に伴ってグループ会社のIS機能が縮小する中でグループ各社のIS部門はどうあるべきかを考えました。IS機能が小さくなれば、企画・開発・保守・運用の業務を自前で行うことができなくなり、IS要員の確保や育成も難しくなる。その結論が「東芝グループのIS部門を1つの仮想IS部門としてとらえ、機能分担する」でした。具体的には、グループ会社のIS部門は事業の競争優位性確保に寄与するIT化の企画に専念し、開発・保守・運用、汎用サービスの提供とIT人材の育成と派遣はTSIS、全体のコーディネーションは東芝本体のIS部門、という役割分担です。
  • 黒須:
  • なるほど、TSISの枠を超えた効率化ですね。会社をまたがる方針となると、具体化は難しかったのではないですか?
  • 小柳氏:
  • そうですね。まずグループ会社のIS部門との信頼関係の構築から始めました。具体的には優秀なIT要員の派遣です。それを確実にするために会議体を作り、ルール化しました。信頼関係の構築は時間をかけて誠意を示していかねばなりませんからね。
    それと、東芝本体の開発部門をTSISに移したことです。分社時に移ったのは、保守・運用部門だけでしたが、保守には開発も含まれます。このためTSISにも開発部門を設け、一定の領域の開発はTSISが担うことにしたのですが、開発が二分されていることに皆もやもやしていました。そこでTSISとして実績を示し、周囲に認められるようになったときを狙って、開発部門を移したわけです。
    東芝本体のIS部門はIT企画とITガバナンス、TSISは開発・保守・運用といったラインサービスの提供となり、役割分担がはっきりしました。TSISメンバーのモチベーションアップにも繋がったと思います。
  • 黒須:
  • 理想的でしたね。TSISの施策が、東芝グループ全体の施策へと変化していったわけですね。
  • 小柳氏:
  • そうですね。この2つをやり終えたことで、TSISの足場が固まり、東芝グループIS全体のスキームが出来上がったので、次の代へバトンを渡すことにしました。
  • 黒須:
  • 貴重なお話をありがとうございました。