業界のホンネとタテマエ


  • このコーナーは、様々なテーマについて業界の方々に屈託のない意見を述べて頂いたり、 スクウェイブとしてのコメントを徒然なるままに記載することを主旨としている。
  • 従って、このコーナーに記載される内容はスクウェイブの事業説明の補足を意図したものではない。
    またゲストの方の意見も含めて、ここに記載される内容は、 スクウェイブの公式見解とは必ずしも一致しないので予め御了承頂きたい。
  • その前提で、このコーナーは、記載者のホンネを記し、 タテマエとのギャップから何かしら読者の業務のヒントになることがあれば大変素晴らしいが、 むしろ私としては、ちょっとした気分転換になって頂ければ本望と考えている。
    是非肩肘を張らずに一杯のコーヒーを飲むついでにご覧頂きたい。
2004年5月20日 黒須 豊

第58回:なぜIT業界は残業過多になりやすいのか。

掲載日: 2019年7月25日
執筆者: 株式会社スクウェイブ
ビジネス・カウンセラー
高野 礼奈
  • 私が新卒で入社した会社は、システム開発を主とする会社であった。
    外部研修が終了して、6月に初めて配属されたプロジェクトでは、簡単な機能の実装から単体テストを任された。
    状況が変わったのが8月下旬ごろ。
    少しずつ残業をする日が増えてきたが、会社説明会では、 「少し残業はあります。月平均20時間ほどですが、忙しいときはそれ以上にもなります。」 と説明を受けていたため、残業があっても特に違和感もなかった。

    9月からは休日出勤をすることも増え、10月に入っても状況は変わらずだった。 それでも、10月末の初めての社員旅行を楽しみに、忙しい毎日の中でも日々の業務をこなしていた。

    そんなある日、プロジェクトマネージャーからプロジェクトメンバーが呼び出された。
    「これからお客様先に引っ越しします。そして皆さんは社員旅行には参加できません。ごめんなさい。」
    社員旅行の4日前、衝撃の内容だった。
    社員旅行で披露する一発芸も考えてあったにためショックが大きかったのだ。
  • それからが大変だった。お客様から今までのテストのやり直しを命じられ、毎日終電まで作業を行う日々が続いた。
    土日のうち1日は出社するようお願いされ、週に1日の休みで働いた。
    その月、新人で残業時間が約100時間という記録を出し、社内で問題になっていたという噂をプロジェクト終了後に聞いた。

    以降様々なプロジェクトに参画したが、その他のプロジェクトでもやはり休日出勤や日々の残業が多く、心身共に疲れ切った状態になることが多々あった。

  • そんな時に安倍内閣で掲げられたのが「働き方改革」だった。
    その対策として、会社から「月の残業時間は50時間まで」というお達しがきたが、その月はすでに月の半分が終了しており、その時点で残業時間は40時間を超えていた。

    すると上司から 「明日休んで。今日は午後半休にして、午後帰って。」 とのお言葉が。
    しかし、この数カ月後、私は地獄の生活が始まるとは思ってもみなかった。

    上司は役職者であったため、残業時間の制限が無いとのことからオーバーワークしてしまい、結果的に入院することになったのだ。
    会社からの残業時間制限は2カ月だけの期間限定で行った政策であったため、それからは日々の残業と休日出勤を繰り返す毎日となったのだ。
  • この経験から「残業は悪」と思っているのは、役員及び総務課のみであり、システム課の上層部はその意識が無いことに気付いた。 そのため、システム課の若い人たちも残業に対する罪悪感が無いまま仕事を進めてしまうのだと感じた。 (ヘルプで入ったプロジェクトで、休日ありきの進捗報告を聞いたときは衝撃を受けたのを覚えている。) また上層部は昭和の体育会系で、徹夜を何度も経験してきた人が多く、それを武勇伝にしている人も多くいた。 若手がそんな話を聞いて、「頑張る=残業」と間違った解釈をする人も少なからずいたように感じる。
    そして、残業を多くしている人が頑張っている、と間違った評価をされている、と多々感じることもあった。

  • では残業を減らすために何ができるのか?
    私自身、決して器用なほうではなく、仕事をする際に時間をかけてしまうことが多かった。 あるプロジェクトに火消し役として投入されたプロジェクトで大変魅力的な先輩に出会うことができた。
    先輩は、タスク量が普通の人より多く、多少の残業はあったものの、夜遅くまで残業することは多くなかった。また、その状況でも若手の教育にも熱心に取り組んでおり、先輩から多くのことを学んだ。
    まず先輩は仕事の優先順位のつけ方が大変上手であった。
    更に優先順位を付けたのち、どの仕事を後輩に振れるかを見極め、タスクを一人で抱え込まない、プロジェクトは全員で乗り切るという姿勢を見せてくれたのだ。
    そのおかげで、少し難易度の高いことにも挑戦することができ、私たち若手も達成感を得られることができたのだ。
    それ以来、私自身もタスクに優先順位をつけ、周囲の得意不得意を把握した上で、振れるものは振って仕事を進めるように心掛けた。時には上司の仕事を引き取り、その分自身のタスクは他に振ることで納期に間に合うように仕事を進めてきたのだ。そのかいあって、ギリギリ納期に間に合うことができたのだ。

  • 先輩が当時私によく言っていたのは「作業効率化」を心がけるということであった。
    様々なプロジェクトに参画し、意外と中堅層に多いと感じたのは、作業を効率化するためにあるツールを使用しない、使いこなせていないことだ。例えば、テキストエディタも使い方によっては、大変便利である。同じ動作を繰り返し行う、CSVファイルをExcelのように罫線を引いた状態で使用する等使い方によっては大変使えるが、使いこなせてはいなかったのだ。

    最も衝撃を受けたのは、wordで考課表を作成している際に、自己評価としてランクS〜Dに丸付けしなければならなかった。wordの機能として囲い文字というものがあり、それを使用することで、簡単に文字を囲むことができるのだが、その当時一緒にプロジェクトに参画していた先輩方は、図形の挿入を使用して文字の上に○の図形を重ねていたのだ。
    ちょっとしたことでズレが生じ、10個程度の質問の丸付けをするだけで約1時間も使っていたそうだ。

    その話を聞いて、囲い文字で簡単に丸付けができますよ、ということを教えた時、感動されていたことを覚えている。
    そこで私は疑問に思ったのだ。なぜ文字を囲む機能があるか調べないのか、と。
    私もwordを使いこなしていたわけではないが、同様のことを疑問に思い調べていた。しかし中堅層クラスになると、頭は凝り固まり、図形を重ねるしかないという思い込みが無駄な作業時間を積み重ねてしまうということに気付いたのだ。

    新人の時、上司から言われたのは「まずは先輩の作業の仕方を真似しなさい。」であった。
    周囲の先輩方がやっているのだから、それ以上の作業の仕方はないのだろう、という思い込みがあったが、当時私の意識を変えてくれた先輩に出会ってからは「もっといいやり方、進め方はないかな?」と疑問に思ってから作業に取り掛かるようになった。
    そうすることで作業に無駄な時間をかけなくなったように思う。

  • 改めて、なぜIT業界は残業過多になりやすいのか?
    私の回答は以下の3点である。
    ・『仕事の優先順位のつけ方が下手』
    →「自分にしかできない仕事」という思い込みが悪循環を生む。
    あなたにしかできない仕事はない。時間が無いときこそ、自分の得意分野を生かして仕事を効率化させることがプロジェクトの成功につながる。

    ・『新しいことを取り入れようとしない』
    →従来のやり方が悪いとは言わないが、時代は進化し続けている。
    だからこそ、その時に一番効率のいいものをどんどん取り入れることも必要である。
    まずは他にいい方法が無いか、と考える癖をつけることが大事である。

    ・『残業に対する意識が低すぎる』
    →これが最も改善するべき問題である。「頑張る=残業」はとんでもない方程式である。

    本当の「頑張る」は限られた時間の中でいかにパフォーマンスを発揮するかである。パフォーマンスを出すためであれば、休憩も必要不可欠である。それを忘れず働いてほしい。
  • 残業過多を無くすために、まずは会社として社員の意識改革が必要ではないか。
    上層部には正しい評価をするべきであること、若手には本来あるべき姿の意識付けを行うことが必要に感じる。
    そのために、社員一人ひとりが何を考え仕事に臨んでいるのか知る必要ある。
    弊社ではモチベーション診断/提言(https://www.k2wave.com/counseling/motivation.html)、モチベーション教育(https://www.k2wave.com/counseling/nam3.html)を行っている。
    弊社のモチベーション診断では、13の仕事に対するモチベーションタイプを知ることができる。一人ひとりの個性を見極めて、仕事のやり方を変えていってはどうだろうか。

    この意識改革が大きく働き方を変えるのではないか、一度考えていただければと思う。